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SunSugarSonBlog
イタチノヘ 07
不自然なほど長い廊下を歩いている。
心臓は自制を失い、激しく動悸している。
天井が、私たちの歩みに合わせ薄暗く緑に光る。
おそらく、振動刺激を感知して発光するプランクトンが
塗り込められているのだろう。
前を歩く警官の腰から強い磁力が発せられているのだろうか、
私の手首に掛けられた手錠は彼から1m以上離れる事ができない。
両側の壁は、今にも私たちに向かって崩れ落ちてきそうな、
異様な圧迫感を伴っている。
彼方の暗がりから、別の警官がこちらに向かって歩いてくる。
彼の周囲だけが歩みに合わせ緑に光るので、スポットライトが
彼の動きをフォローしているようにも見える。
私の前をゆく警官が先に敬礼をする。
おそらく彼の上司なのだろう。
しゃくれた顎と屈強そうな体の上司は、敬礼を返してから
私の顔を一瞥する。
彼らの威厳を保つための帽子の下から、
恐ろしく冷たい視線が私の体の芯を突き刺す。
こうした明かりや廊下の長さといったものは、
脱出の困難さ、自分の置かれた状況の過酷さを
強調するための演出なのだろうか。
私はまんまとそれに乗せられ、
絶望的な気分になってきていた。
早くコンプレクソンを飲みたい。
だがその願いは聞き入れられないだろう。
右派の誠愛党が与党の座を獲得して以来、
警察権力の横暴は増す一方だ。
私はどうにか自力で、自分の感情をコントロールせねばならない。
取り調べ室に一人残され、
担当の刑事が来るのを待たされる。
簡単なテーブル、イスだけが用意された部屋、
なんと冷たい色彩だろう。
時計がないのと極度の緊張とで、
時間の歩みが異常に遅く感じられる。
爆発しそうな心臓をなだめながら、
私はどのようにして自分の素性をごまかす事ができるか、
混乱した頭で必死に考えていた。
今、私の能力を悟られるわけにはいかない。。。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
ノックも無しに、ふいに背後のドアが開いた。
そこに立っていたのは、刑事というより、
明らかに囚人の格好をした男だ。
私は突然の事に当惑した。
彼は悠然と私の視線を横切り、
向かいのイスに腰を下ろす。
男はじっと私の顔を眺め回した後、
おもむろに口を開いた。
「出たいか?」
馬鹿げた質問だ。答えは決まっている。
だが、彼の姿には、どこかしら、
彼の言葉のすべてに深い意味のあるような、
不思議な真剣さというものを感じさせるところがあった。
私は、慎重に、頷いた。
「ある女性を助けてあげてほしい。
その女性は、本来この街にいるべき人間ではない。
彼女があるべき所に戻るまで、彼女の事を助けると約束すれば、
君の事をここから出してあげよう」
瞬間、私の脳裏にはとんでもない面倒事を
しょいこんでしまうという、はっきりとした予感が現れた。
私は躊躇した。私がこの街に来たのは、
安定のためであって、決して冒険のためではない。
「だがそれは、君にとっても必要な事なのだ」
私はうつむいていた顔をぴくりと上げる。
薄々は感付いていたが、この男もどうやら能力者らしい。
「この部屋は特殊な造りになっていてね、テレパシーが
通らないようになっているんだ。それでわざわざ、
危険を冒してここまでやってきた。
君がここに来た事は、大きな運命の一端だから」
「...詳しい話を」
「その時間はない。やがて刑事がやってくるだろう。
君は今、選ばなければいけない。
イエスか、ノーか」
この混乱した頭に、そんな重大な選択をさせる事は
不安だった。
私は目を閉じ、直感に頼る事にした。
答えは、始めから出ていたようだ。
彼がにこりと微笑んだ。
「ありがとう。
では、くれぐれも、彼女の事をよろしく頼む。
この世界にとって必要な方だ」
思い出せるのはそこまでだ。
気がつくと私は、自分の部屋のベッドに横たわっていた。
心臓は自制を失い、激しく動悸している。
天井が、私たちの歩みに合わせ薄暗く緑に光る。
おそらく、振動刺激を感知して発光するプランクトンが
塗り込められているのだろう。
前を歩く警官の腰から強い磁力が発せられているのだろうか、
私の手首に掛けられた手錠は彼から1m以上離れる事ができない。
両側の壁は、今にも私たちに向かって崩れ落ちてきそうな、
異様な圧迫感を伴っている。
彼方の暗がりから、別の警官がこちらに向かって歩いてくる。
彼の周囲だけが歩みに合わせ緑に光るので、スポットライトが
彼の動きをフォローしているようにも見える。
私の前をゆく警官が先に敬礼をする。
おそらく彼の上司なのだろう。
しゃくれた顎と屈強そうな体の上司は、敬礼を返してから
私の顔を一瞥する。
彼らの威厳を保つための帽子の下から、
恐ろしく冷たい視線が私の体の芯を突き刺す。
こうした明かりや廊下の長さといったものは、
脱出の困難さ、自分の置かれた状況の過酷さを
強調するための演出なのだろうか。
私はまんまとそれに乗せられ、
絶望的な気分になってきていた。
早くコンプレクソンを飲みたい。
だがその願いは聞き入れられないだろう。
右派の誠愛党が与党の座を獲得して以来、
警察権力の横暴は増す一方だ。
私はどうにか自力で、自分の感情をコントロールせねばならない。
取り調べ室に一人残され、
担当の刑事が来るのを待たされる。
簡単なテーブル、イスだけが用意された部屋、
なんと冷たい色彩だろう。
時計がないのと極度の緊張とで、
時間の歩みが異常に遅く感じられる。
爆発しそうな心臓をなだめながら、
私はどのようにして自分の素性をごまかす事ができるか、
混乱した頭で必死に考えていた。
今、私の能力を悟られるわけにはいかない。。。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
ノックも無しに、ふいに背後のドアが開いた。
そこに立っていたのは、刑事というより、
明らかに囚人の格好をした男だ。
私は突然の事に当惑した。
彼は悠然と私の視線を横切り、
向かいのイスに腰を下ろす。
男はじっと私の顔を眺め回した後、
おもむろに口を開いた。
「出たいか?」
馬鹿げた質問だ。答えは決まっている。
だが、彼の姿には、どこかしら、
彼の言葉のすべてに深い意味のあるような、
不思議な真剣さというものを感じさせるところがあった。
私は、慎重に、頷いた。
「ある女性を助けてあげてほしい。
その女性は、本来この街にいるべき人間ではない。
彼女があるべき所に戻るまで、彼女の事を助けると約束すれば、
君の事をここから出してあげよう」
瞬間、私の脳裏にはとんでもない面倒事を
しょいこんでしまうという、はっきりとした予感が現れた。
私は躊躇した。私がこの街に来たのは、
安定のためであって、決して冒険のためではない。
「だがそれは、君にとっても必要な事なのだ」
私はうつむいていた顔をぴくりと上げる。
薄々は感付いていたが、この男もどうやら能力者らしい。
「この部屋は特殊な造りになっていてね、テレパシーが
通らないようになっているんだ。それでわざわざ、
危険を冒してここまでやってきた。
君がここに来た事は、大きな運命の一端だから」
「...詳しい話を」
「その時間はない。やがて刑事がやってくるだろう。
君は今、選ばなければいけない。
イエスか、ノーか」
この混乱した頭に、そんな重大な選択をさせる事は
不安だった。
私は目を閉じ、直感に頼る事にした。
答えは、始めから出ていたようだ。
彼がにこりと微笑んだ。
「ありがとう。
では、くれぐれも、彼女の事をよろしく頼む。
この世界にとって必要な方だ」
思い出せるのはそこまでだ。
気がつくと私は、自分の部屋のベッドに横たわっていた。
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