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SunSugarSonBlog Page 5

イタチノヘ 04


2009/04/15 01:41  Permalink   del.icio.us livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録 Buzzurl このページを行き先登録

ネグレクト(飼育義務放棄による動物虐待)の容疑で
4D-165番ブロッコの521号室の家宅捜索が行われる事となった。
当局からは警官が二人、
動物保護シェルターからは女性スタッフが一人、
ロック解除のため管理人が一人、
521号室の前に集結した。
警官らが左腕のリストバンドに
指を触れると、5秒ほどかけてじっくりと消えてゆく。
女性スタッフはそれをまじまじと見詰めた。
完全に透明化する直前、二人はふわりと揺らいだ。
わずかに宙に浮いたのだろう。
やがて共有キーでロックが解除されると、
開いたドアの隙間からすさまじい臭気が漂ってきた。
日々増してゆくこの異臭に耐えかねた
隣人の通報で今回の事態となったわけだ。
開いたドアから、透明で、足音もない警官が二人、
室内へ入っていく。

予想に反して、発見された動物はごく少数だった。
猫が二匹だけ。
フードタイマーのストックも充分にあり、
トイレは糞にまみれてはいたものの
消臭器の効果でそれなりに中和されていた。

厚いカーテンで光を遮った薄暗いリビングに、
鼻をつく鋭い臭いが満ちていた。
部屋の中央には、起動したままのゾディ。
うす青く発光している。
その光に照らされ、容疑者がソファに座っていた。
警官の呼びかけにも、まったく反応を示さない。
年上の方の警官が音も無く容疑者に近づく。
臭いの原因はどうもこの男らしい。
容疑者の後頭部にはゾディのコントローラーが装着され、
目はあきらかにゾディの世界を見つめている。
もう一人の警官に明かりをつけるよう指示すると、
年上の警官はゾディの電源を切る。
明かりの中で見ると、容疑者が糞尿を座ったまま
垂れ流していることが判明した。
男の目には既にゾディのバーチャル空間は見えていない
はずだったが、男の目はあいかわらず
眼前のものを認識してはいない。
しかし表情は恐ろしいほどの衰弱ぶりを示している。
警官が男の肩に触れると、
男はぱたりとソファの上に倒れた。
やがてすうすうと寝息を立て始める。
おそらく数日間に渡ってずっと
ゾディの中に篭っていたのだろう。
どういう方法を使ってかは判らないが。
サイドテーブルには、大量の錠剤が載っていた。

「ジャンキーめ」

年上の警官が吐き捨てるように言った。

年下の警官は、ある都市伝説の事を考えていた。
ゾディに住む、悪魔の噂。


イタチノヘ 03


2009/04/08 03:03  Permalink   del.icio.us livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録 Buzzurl このページを行き先登録

私の住む居住ドームから東へ20kmほど離れた位置に
幅数kmに及ぶ断崖絶壁があり、
その下を流れる川沿いにイマイチは形成されている。
元々は地形の特性上砂が溜まりやすいという事で
廃棄物の埋め立て処分場として利用されていた地域だ。
そうしたゴミの中から再利用できる物を探し、
修理、加工して露店で売り始める人が集まり始めた。
やがてそれが巨大な市場を形成していくにつれ、
周辺に安価な宿泊施設や飲食店、娯楽場など
様々なサービス業も(もちろん無許可で)姿を現し、
やがてシティの法支配がこの地区では
徹底できない所に目をつけたヤクザ、宗教団体等が
この地で勢力を競い合う事となり、
こうして猥雑ながら生命力に満ち溢れた、
イマイチ特有の文化、生活が形成されるに至ったのだ。

それは無菌状態で暮らす都市生活者のそれとは
遥かにかけ離れたものである。
そのために、この地を初めて訪れるクリーン達は
しばしば「酔った」ような症状を示す。
けたたましく飛び交う売り子らの口上が、
無数の人の足音と話し声に混じり、
迷路のような露天市場を絶えまなく流れ続ける
人の波に押されながら、
スラム特有の埃っぽい空気を吸い続けると、
そうした事全てからくるストレスは
慣れない人間の意識をゆっくりと侵食する。
理性を麻痺させる事でストレスを軽減しようとする
脳の働きがあるのかもしれない。
まあそういう状態に陥ったクリーン達は大抵、
何か冷たい物を探して市場の中をうろつくのだ。
だが、この町で清潔な水を手に入れるのは至難の業だ。
アンウォッシュ達は、川沿いに暮らしながら
川の水で体を洗う事ができない。
その川がひどく汚染されているからだ。

そういうわけで、この市場にはクリーン達の探す
いわゆる喫茶店なんてものは、ほんの限られた数しか無い。
大抵の人に取って、水は自分がどうにか生きていけるだけの
量を確保するのに精一杯で、商売にまわす余裕などないのだ。
さらに迷路のような市場の作りが初心者を惑わせ、
喫茶店に辿り着くまでに数時間がかかるなんて事もざらだ。


それで私は今日も馴染みの喫茶店に腰を下ろして
彼らのやってくるのを待っている。
そう、たった今、首の下の汗を拭いながらやってきた男、
神経質そうな目で辺りをきょろきょろとうかがっている。
へとへとに疲れきった様子で荷物を椅子に置き、
カウンターに腰を下ろした。

彼は絶対にクリーンだ。

私は確信して立ち上がる。


イタチノヘ 02


2009/04/06 02:08  Permalink   del.icio.us livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録 Buzzurl このページを行き先登録

その印象にひどく揺さ振られながら、
私は日課となっている処方箋をコップの水で飲み干す。
コンプレクソン。
複雑な情報刺激や状況に対応するストレスを軽減するための
政府認可薬だが、副作用として惰性的になる傾向がある。
実際は複雑なものを、単純化して見せてしまうからだ。

とは言っても、これがなければ
仕事ができない。

私の胃は薄いオブラートに包まれた
オレンジ色の液体を瞬時に吸収し始め、

もやもやとした夢の余韻は
科学の力で次第に消え去ってゆく。

そんなことをぼんやり感じながら
私は身支度を整える。
私の仕事はフレックス制ではあるが
必要とされる身だしなみの基準は高い。
熱いお湯と石鹸で髭を剃る。
こういう習慣は、ブロッコに住むようになったからといって、
そうそう変えられるものではない。
柔らかい香りのするタオルで顔を拭くと、
丁寧に折りたたまれた麻布の服に袖を通し、
防塵のマントを羽織って鏡の前に立つ。
背筋を伸ばし、自分の姿に威厳を探す。

廊下に出て、エレベーターを待つ。
隣人の部屋で、時計のベルが響く。
彼は時間を失くした。
私の父と同じくらいの歳だろう。
生活保護を受けてはいるが、
ひっきりなしに鳴るベルの音なしでは
どんな予定も組み立てる事はできない。
そうして支給されるジグソーパズルを
ひたすら組み立てている。


エレベーターのドアが開く。


エアカーテンを抜けて
ブロッコのエントランスを出ると、
白い歩道に烈しく日光が降り注いでいて
軽いめまいを覚える。
磁力レーンに乗って流れる人の列に加わり、
立ち並ぶ巨大ブロッコリーの林を抜けていく。
ドームの中に暮らす人々にとっての
豊かさ、それにまつわる自尊心の基準となるのが
このブロッコに部屋を持つことだ。
ブロッコに部屋があるという事は、
ドーム全体を動かしている経済活動の中で
一定の基準を超えて労働し
払うべき税金を納めているという事の証であり、
それはいわゆる市民、クリーンを自称するためには
欠くべからざる最低条件なのだ。


追い越しレーンを大荷物で急いでいた男が
すれ違いざま別の男の肩にでもぶつかったのか、
背中に激しい罵声を浴びせられている。
そういうシーンで舌打ちを聞く事は毎日のようにあるが、
ああやって大声で怒鳴り散らす人は少々珍しい。
感情がまだ活発に活動しているのか、
サプリメントのとり過ぎか、そのどちらかだろう。
いずれにせよ、どうでもいい事だ。
私には、関係の無いことだから。
私はイマイチ方面へ入るレーンに移る。


イマイチは川沿いに形成されたスラムで、
住環境としては劣悪だが、
貨幣と物々交換、その両方で成り立つ
巨大迷路のような市場があり、
クリーンのマーケットには出回らない類の、
珍品、逸品、砂漠の向こうから
どういうわけだか紛れ込んだ
生鮮食品なんかが手に入る。
そうした掘り出し物を求めて、
このスラムにはクリーンの人々もやってくる。
たいていはコソコソとしながら。
アンウォッシュから物を買う姿を
クリーンの誰かに見られはしないかという、
不安が彼らをそうさせるのだが、
そんな彼らもアンウォッシュの視線に対しては
まるで無敵のように悠然としているのである。


私がこの市場で買い求める品、それは
こうした未熟で好奇心旺盛なクリーン達だ。


イタチノヘ 01


2009/04/05 23:42  Permalink   del.icio.us livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録 Buzzurl このページを行き先登録

砂漠なのに、曇り空。
私は宙に浮かんでいる。
下を見下ろすと、高さ7メートルほどの石柱が
二列、砂漠を一直線に貫いている。
20m間隔で配されたその石柱の列の間を、
一列百人はいるだろうかという人間の大群が
整然と行進してゆく。

だが、その行進は奇妙だ。

全ての人間が、目の前を歩く人の背中を、
鞭打ち、棒で打ち、ナイフでえぐり、噛み付きしながら
進んでゆく。
生まれたての子供から、杖をついた老人までが、
同じように背中を晒し、眼前の背中をいたぶる。

そうして続いてゆく大行進から、
ぽつり、ぽつりと逃げ出す人々が見える。

かれらは石柱の目印を見限り、
何一つ目印のない広大な砂漠へと消えてゆく。

私はやがて、その行進の中へ降りてゆく。
そうして、機械的に繰り返される
暴力の連鎖の中に身を委ねる。
背中には激痛が走り、
それによって引き起こされる怒りは
鞭を振るう右手に込められ、
眼前をよたつく、もはや見慣れた傷だらけの背中に
新たな激痛を与える事で発散される。
やがて意識が痛みのために麻痺し始め、
自らの行為を認識せぬまま、
感情の連鎖に身を任せるようにして
暴力は続けられる。

そしてふと隣を見ると、
広大な砂漠が広がっている。


脱出を阻むものは何も無い。


この道には、ただ、目印となる石柱がずらりと続くだけだ。

私は、反射的に、
砂漠の中へ逃げ出す。

誰かが、叫んだかもしれない。

「死んでしまうよ!」



だが、私は砂漠を放浪するうちに、
同じ行進から逃れてきた仲間を見つける。
彼は私よりはっきりと背が高く、
年齢もかなり上だ。

私たちは、砂丘のうえから、
自分たちが逃れてきたばかりの
運命的行進を振り返る。

それは薄暗く寒々とした砂漠の中を
そろそろと這って進む一匹の細長い虫のようだ。


やがて私たちは他の仲間と合流し、
砂漠の中に社会を作った。


新しい年、新しい映画


2009/01/02 04:05  Permalink   del.icio.us livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録 Buzzurl このページを行き先登録

年が明けましたね。
家は喪中なのであまりめでたい言葉は
使えないのですが、
昨年同様、今年もたくさんの
人との繋がりの中で暮らしていければと
思っています。
どうぞみなさん、今年もよろしく。


さてさて、
新しい映画のアイデアが転がり始めています。
最初から漠然としたイメージ、
幾つかのシーンは頭の中にあったのだけど、
最近会う人会う人にこの物語を語っていたら
次第にストーリーとしての形を成してきた。

人に向かってストーリーを語る時、
なるべく面白く話そうとして頭を使うから、
一人で考えている時よりも効率的なのかも。
一人じゃないと降ってこないアイデアもあるから、
両方必要なんだけどね。

という事で、
この場を借りて、
制作ノートを綴ってみようと考えています。
ブログを書く位の気楽さで、
程よく人の目を気にしつつ
面白くしていければ、という事で。

「公開しているブログで
こんなストーリーを語ったら
こんな人だと思われるよ」
っていう自意識、
それを振り切るスピードで
自分の物語に熱中できるか、
情熱と自意識のかけっこ。



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